NON管弦楽団指揮者の船本孝宏と申します。
定期演奏会が近づいてまいりました。
ここでの指揮者としての執筆を毎年楽しみにしております。
年に一度のことなので意気込みを語りたく思います。長文注意!
【ごあいさつ】
気が付けば2014年開催の第1回定期演奏会から関わらせて頂き、今回は早くも第6回目を数えることとなりました。
初めてこの楽団に寄せて頂いた当時の僕の年齢は33歳でしたが、現在はなんと39歳に…!!(_)
今となってはすっかり当方にとって毎年のライフワークのひとつにもなっております。
30代の人生の良い時期を楽団の成長と共に過ごさせて頂きました。
サンキュー(39)という年齢にふさわしく、数日後の定期演奏会には感謝の気持ちをこめて演奏したいと思っておりますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
【指揮者は演奏する音楽の作品や原作を知っておく必要があるのか?】
この稿を借りて「指揮者は演奏する音楽の作品や原作を知っておく必要があるのか?」について書き連ねたいと思います。
ここでいう「知っておく」は「アニメ音楽ならそのアニメを見たことがあるのか、ゲーム音楽ならそのゲームをプレイしたことがあるのか?」ということになります。
結論から申しますと、僕個人的には「指揮者も演奏者も必ずしもその作品や原作は知っておかなくても良い」という考えです。
指揮者も演奏者も楽譜さえあれば、その内容から音楽を作り出すことに努められます。
音符からテンポ、強弱、作品の雰囲気や響きからどのような演奏を欲しているかは見えてきます。サウンドトラックの曲ではありますが純粋に音楽として練習に取り組むことはできます。
とあるプロオケのとあるゲーム音楽コンサートを聴く機会がありました。その演奏会で客演指揮を務められたW氏は、「そのゲームは私は全くの未経験で、どのような場面で使われる音楽なのかは分からないものばかりだ」というお話をされていました。
しかしながら、W氏の卓越した指揮ぶりから、どのような音を欲しているのかが視覚的にも伝わるもので、メリハリのある心に残るすばらしい演奏をオケから引き出されていました。僕もその時からW氏のような豊かな表現を引き出せる指揮者になることを目標にするようになりました。
誤解を招かないようにこの先もお読み頂きたいですが、「必ずしも知っておかなくても良い」というのは「知る必要もない」とか「興味なしで良い」とうことではありません。物事においてもそうですがその対象に「興味なし」という態度で終わってしまうことはなんとも悲しいものがあります。「知る必要もない」という考えから出てくる音楽は何ともつまらないものです。
僕は演奏する楽曲には指揮者も演奏者も愛情を持って演奏して欲しいと願っています。
作品や原作をチェックできなかったとしても、それをよく知る人からの一言二言の説明があるだけでも、それが登場人物のテーマなのか、町を歩く場面なのか、不吉な場面なのか、悲しい場面なのか、戦う場面なのか、エピローグなどなど…。音楽から見える情景のイメージぐらいはできるものです。
現実問題も重々理解しております。知らない作品をチェックする場合は、アニメを知るためにはDVDを購入する、またはレンタルして見る、最近なら月々の定額アニメ動画配信サービスを利用することでやっとチェックすることができます。ゲームの場合はゲーム機とソフト、作品によっては必要なハードにも種類が違うということもあります。
いずれにしてもエンターティメントは楽しむにもコストがかかるものであり(お金を出すのは制作した人への敬意の気持ちでもあります。)、誰しもチェックをするのは難しいという現実問題はあります。
しかし「興味を持つ」、「愛情を持つ」、「イメージを持つ」ことにはコストはかかりませんよね。
最近でこそ関西、関東を中心にアニメ音楽やゲーム音楽専門のオケはイベント時の結成オケも含めると増えてきておりますが、少なくともこの楽団においてはこの上記の3つは少なくとも心持としてはいつでも持ち合わせておきたいものです。
【アニメとその楽曲のみどころ】
僕はこれまで定期演奏会で演奏してきた曲目(第1~3回のハルヒシリーズ、第4回のCCさくら、第5回のジブリシリーズなど)は、少しは前知識としてアニメ作品は知っておりました。中には大好きなアニメでテンションがあがったことも(笑)
しかし今回の『Re:ゼロから始まる異世界生活』と『マクロスフロンティア』は両作品とも全くの無知という状況から始まりました(汗)。こういうことは初めてです!(>_<)
練習も佳境に入り、今となっては両作品とも本編の中身をチェックすることができました…!o(^o^)o
今回の作品の舞台の全容はおおよそつかめました。個人的には『マクロスF』のほうが好きかも←
『Re:ゼロ…』を見て真っ先に思いついたのが、石井あゆみ原作の『信長協奏曲』と佐野洋子原作の絵本『100万回生きたねこ』です。
それぞれ「異世界への移動」、「死に戻り」という点はストラクチャ(構造図)としては通じるものがあると思いました。異世界を旅する話はこれまでもそのような設定の作品は数多くあったと思います。
しかし現実、異世界に行くという神隠しに遭ってしまったら平静ではいられないでしょう(汗)。
しかし『Re:ゼロ』の主人公スバルはそんな状況でも逆境に立ち向かいます。やたらとメタ的な発言が多いのは興ざめもいいところです(汗)。
「異世界行進曲」ではその主人公スバルの性格と異世界の様子を短い中にも描かれています。「魔女の呼び声」では、スバルが”死に戻り”で体験する、他人には話せない、分かってもらえない、自分にしかわからない苦悩と混乱の様子が描かれています。「沈黙のレクイエム」は感情がほとばしる美しい曲です。
『マクロスF』は作品の舞台が2059年の話なので今年2019年はなんと「40年前記念」になるんですね!
巨大移民船団が住処を見つけたプロローグで流れる「Frontier 2059」は宇宙の壮大さをあらわす曲であり、一気にマクロスFの世界に引き込まれることでしょう。金管の活躍にこうご期待!
主人公アルトの同級生でヒロインのランカ・リーのテーマとなっている「イヌミミランカ」ではオーボエの種類のひとつであるイングリッシュホルンのメロディにオーケストラには普段使われない特殊楽器の活躍にもご注目頂きたいです!
ロボット戦闘機と地球外生命体パジュラとのシリアスな大戦時に流れる「The Target」では切迫感しかありません!心の温度が一番高くなることでしょう!
マクロスFのテーマともなっている「歌が世界を救う」と言わんばかりにたくさんのオリジナルソングがあるのも魅力のひとつです。
マクロスFの音楽とオリジナルソングを手がけた作曲家菅野よう子さんのセンスの光る「トライアングラー」を取り上げます。
しかしランカと、もうひとりのヒロインのシェリルをめぐる三角関係には心が痛くなりました…(ToT)
三角関係を避ける方法を是非とも教えて頂きたいものです(汗)
【今回の演奏会に向けて】
今回は全体的にシリアスな音楽が多いのが特徴ですがどの音楽も聞きやすさがありますので是非とも安心して聴いて頂きたいです(^^)
そのぶん迫力を出すために使われる打楽器群に注目です!
リズムやテンポがはっきりした曲はかっこよく決めたいところですね。
音楽で熱くなり過ぎるとテンポが速くなってしまいますし、周りが見えなくなってしまうものです。
本番の指揮者の仕事は、その熱くなりすぎたテンションを制御することに尽きます。
僕が指揮者として本番にやっていることはこれです。
- テンポを決めること。
- 「入るところはここですよ」と合図を出すこと。
- 息を吸わせること。
- 楽しいところは楽しく、やわらかいところはやわらかく、シリアスなところはシリアスに振ること。
- 本番中のミスを責めないこと。
- 変顔をしないことw ←(;^^)
- 指揮棒をふっ飛ばさないことww ←(>_<)
- 指揮台からコケないことwww ←(ToT)
最後にアニメの素敵な音楽の数々に向き合う機会を頂いた団長、副団長をはじめ、団員、エキストラ、内部外部編曲担当の方々、各委員の方々、関係者の皆様にこの場を借りて感謝いたします。
僕も団員も心を込めて演奏します。
ぜひとも生に触れるために一人でも多くの方に来て頂きたいです!
当日は会場でお待ちしております!o(^▽^)o